【WEBいきもの図鑑】03|ヨシノボリ
こんにちは。「Midori_Times.net」編集部です。
都市に暮らす身近な生きものたちをご紹介するWEBいきもの図鑑。今回は「ヨシノボリ」です。都市で生活していると、水辺のいきものたちを身近に感じる機会はそれほど多くないかもしれません。
でも、私たちの生活圏のすぐそばの川に、小さないきものたちが暮らしています。その代表格がヨシノボリ。全国の清流や都市河川に広く生息し、環境の変化にあわせてたくましく生きる淡水魚です。早速、生態や人との関わりを見ていきましょう。
ヨシノボリはどんな魚?
ヨシノボリは世界中の温帯・熱帯域に広く分布するハゼ科の淡水魚です。体長は5cm〜10cmほど。日本では地域によっていくつかの種類が見られ、頭部の赤褐色の線、体側面に黒い斑点、底に張り付くように泳ぐ姿が特徴です。胸ビレを細かく動かして石の間をすり抜けたり、流れの強い場所で踏ん張る姿にはとても愛嬌があります。
名前の由来は、葦の葉をよじ登るように川底で動くからという説も。実際、ヨシノボリはメスが川底の石に産みつけた卵を守るために、オスが巣穴の入り口で体を震わせながら新鮮な水を送り込む、とても丁寧な子育てをします。
また、ヨシノボリは水辺環境の変化に比較的強く、わずかな水の流れと石場があれば暮らすことができます。ゆえに渋谷駅のすぐそばを流れる渋谷川など、都市河川で姿を見かける機会も多く、ヨシノボリの存在は水辺の環境が健全に保たれていることの目安の1つになっています。
水辺の生態系を支える存在
ヨシノボリは、都市の水辺環境にとって「縁の下の力持ち」のような存在です。ヨシノボリが川底に棲む水生昆虫や小型のエビ類を食べることで、水質悪化の一因となる有機物の増加を防いでいます。また自身がサギなどの鳥類や肉食淡水魚の餌となることで、食物連鎖のエネルギーの流れを支えています。
都市部の河川は水量の変動が激しく、豪雨によって濁流が発生する一方、晴れた日の水質は時に透明度が非常に高い状態になることも。ヨシノボリはそうした環境の変化に対し、石の隙間に隠れながら暮らす習性を活かしながら、たくましく適応してきました。ヨシノボリが暮らしているということは、川の多様な環境が保たれている証拠でもあります。
ヨシノボリの棲む東京ポートシティ竹芝「水の景」

東急不動産は、広域渋谷圏の生物多様性保全に向けて、商業施設・オフィスビルの屋上緑化やシジュウカラの巣箱設置、セイヨウミツバチの養蜂など、さまざまな取り組みを進めています。そうした取り組みとあわせて、2020年9月に開業した「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)には、生物多様性を目に見える形で実感できる「竹芝新八景」を設けました。
その1つである3階の「水の景」には、小さな生態系を表現するアクアテラリウムを設置。水槽にはヤマトヌマエビ、シマドジョウ、メダカといった多摩川中流域に生息する在来種と一緒に、ヨシノボリが元気に泳いでいます。
こうした川のいきものたちの排泄物は、土壌中のバクテリアの働きによって窒素化合物に変化し、植物に吸収されます。東京ポートシティ竹芝「水の景」は、小さなスペースながら、自然界の窒素循環や生物多様性の大切さを表現しています。
東急不動産は人もいきものも健やかに過ごせる都市づくりに向けて、これからも生物多様性の保全活動に取り組んでいきます。