【WEBいきもの図鑑】04|ハシブトガラス

こんにちは。「Midori_Times.net」編集部です。

広域渋谷圏に暮らす身近ないきものたちをご紹介する本シリーズ。第4回目は「ハシブトガラス」です。街中でよく見かける鳥ですが、早朝の繁華街でゴミをついばんだりする姿に、あまり良い印象を抱いていない方もいらっしゃるかもしれません。

でも、ハシブトガラスは本来、森林を主な生活圏としています。都市に適応しながら暮らしていけるのは、野生動物ならではの適応力の高さとしたたかさがあるからこそ。ハシブトガラスについて深く知ることは、都市における人と自然、いきものの関係を考えるうえで大切なヒントになるかもしれません。

ハシブトガラスはどんな鳥?

ハシブトガラス(スズメ目カラス科)の体長は約50cmです。全身がつやのある黒い羽毛に覆われた大型の鳥です。先端が湾曲した太い嘴(くちばし)を持ち、丸みのある頭部が特徴です。もともとは森林を中心に生息し、樹木の上に巣をつくり、虫や小動物、木の実、落ち葉に隠れた幼虫などを食べて暮らしています。

なお、世界中には約40種類のカラスの仲間が生息していますが、日本国内で繁殖し、1年中その姿を見ることができるのはハシブトガラスとハシボソガラスの2種類のみです。ハシボソガラスは農地や河川敷など開けた場所を好み、嘴が細く、ハシブトガラスと比べて鳴き声がややしゃがれています。

また、一般的に人が「賢い」と感じるカラスの行動(例:空中から木の実を落として殻を割る、車に轢かせて中身を取り出すなど)は主にハシボソガラスで観察される特徴で、ハシブトガラスはあまり得意でないとされています。

生態系の「なんでも屋」

続いてハシブトガラスが生態系のなかで果たす役割について見ていきましょう。

ひと言でいえば、ハシブトガラスは「なんでも屋」です。雑食性のハシブトガラスが動物の死骸や腐敗した果実を食べることで、自然界における有機物のサイクルを支えています。また、木の実を食べて種子を運び、街路樹や緑地の植物の拡大に貢献することもあります。

ちなみに、もともと森で暮らしていたハシブトガラスが都市に進出したのは、戦後の高度成長期からといわれています。人の経済活動が活発になるにつれ、食べ物の残りを餌として確保できるようになり、さらに1970年代以降、都市部の高層ビル化が進んだことで、森で営巣してきたハシブトガラスにとって都市が暮らしやすい環境になったと考えられています。

「ゴミを散らかす」「鳴き声がうるさい」といったマイナスイメージが先行しがちなハシブトガラスですが、ある意味では人の暮らしに寄り添って生息地を広げてきた、私たちにとってとても身近な鳥なのかもしれません。

「おもはらの森」とハシブトガラス

東急不動産では生物多様性の保全に向けて、広域渋谷圏の商業施設やオフィスビルの屋上緑化など、さまざまないきものが行き来できる空間づくりを進めています。

その一環として、東急プラザ表参道原宿の屋上には、日本在来の植物(ケヤキ、イロハモミジ、クスノキなど)を植えるとともに、多くのいきものたちに立ち寄ってもらえるよう、地元の小学生の協力のもと、鳥の巣箱を設置してきました。

2012年以降、「おもはらの森」で確認できたいきものの数は、鳥類22種、昆虫類158種。都市で暮らす多種多様ないきものたちのなかには、私たちの身近な環境で、したたかにたくましく生きるハシブトガラスの姿も見ることができます。

東急不動産は、引き続き人といきものが共生しながら、心地よく暮らせるサステナブルな都市づくりを進めていきます。